Global Legal Update Vol. 125 | 2026年3月号
ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。
税務
合衆国最高裁、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置を無効と判断
United States Supreme Court Invalidates IEEPA Tariffs
Learning Resources, Inc. v. Trump事件において、合衆国最高裁判所は、大統領が国際緊急経済権限法(「IEEPA」)に基づき関税を賦課する権限を有しないとの判断を下しました。
2026年2月20日(金)、合衆国最高裁判所は、6対3の多数決により、IEEPAが大統領に関税を課す権限を付与していないと判示しました。本判決により、中国、カナダ、メキシコに対する関税および相互関税を含む、IEEPAに基づく関税は無効となります。なお、これらの関税により、これまでに約1,750億ドルの歳入があったと報じられています。
この多数意見はロバーツ首席判事が執筆しました。同判事は、ゴーサッチ判事およびバレット判事とともに、これらの関税は議会が有する歳入権限に関わるものであり、かつ、経済的・政治的に重大な問題に関わるものであると指摘しました。その上で、主要問題ドクトリン(major questions doctrine)を適用し、IEEPAには関税の賦課に係る議会の権限を委任する旨の明確な規定が存在しないと説示しました。ケイガン判事は一部同意意見において、委任の欠如は法律の文言自体から明らかであると述べ、ソトマイヨール判事およびジャクソン判事が当該意見に賛同しました。これらに対し、カバノー判事は、IEEPAの文言上、関税の賦課権限は明確に委任されていると主張する反対意見を執筆し、トーマス判事およびアリト判事がこれに賛同しました。
また、合衆国最高裁判所は、IEEPA関税に対する異議申立てについては国際貿易裁判所(Court of International Trade)が専属的管轄権を有すると判断しました。ただ、救済措置については判断が示されておらず、IEEPAに基づき納付済みの関税の還付については、未解決のままになっています。当日(20日)の夜、トランプ政権は「特定の関税措置の終了」と題する大統領令を発出して、IEEPA関税の徴収を事実上終了し、関係行政機関に対し可及的速やかにIEEPA関税の徴収を停止するよう指示しました。
トランプ大統領は、他の法的根拠に基づく新たな関税措置を導入する意向を表明しています。同日夜、トランプ政権は「国際収支の根本的問題に対処するための一時的輸入課徴金の賦課」と題する大統領布告を公表しました。同布告は、1974年通商法第122条に基づき、2月24日以降一定の例外を除くすべての輸入品に対し10%の従価税を課すものです。さらに、トランプ大統領は、翌21日(土)、この従価税率を第122条で認められる上限である15%に引き上げると発表しました。
本アラートは、米国の関税政策に関する重要なトピックであり、米国市場において事業を展開する日本企業や米国向けに製品を輸出する日本企業にも大きな影響を有すると考えられることから紹介する次第です。米国では、本判決以後も還付の手続や範囲等をめぐる裁判が進行中であり、この分野の最新情報にご関心のある方は、当事務所の担当者までご連絡ください。
その他、2026年2月は以下の情報をAlert/Commentary 等としてお伝えしています。
独占禁止法・競争法
ドイツ競争当局、Amazonマーケットプレイスにおいて出品者の価格に影響を与えた疑いでアマゾンに罰金
German Competition Authority Fines Amazon for Allegedly Influencing Prices of Third-Party Sellers on Amazon Marketplace
欧州委員会が、英国競争・市場庁(CMA)による民事責任の全面免責アプローチを否定:アジア企業はカルテルの課徴金減免制度の利用を再考
No Blankets Allowed: EC Rejects CMA's Full-Immunity Damages Approach as Asian Companies Reengage with the Cartel Leniency Program
米国司法省(DOJ)および米国郵便公社(USPS)、カルテル内部通報者プログラムに基づく初の報奨金
Special Delivery: DOJ and USPS Announce First-Ever Payday Under Cartel Whistleblower Program
商事・不法行為訴訟
米国連邦裁判所、被告人と生成AIとのやり取りは秘匿特権によって保護されないと判断
Federal Court Rules that a Defendant's Communications With Generative AI are Not Privileged
事業再編・倒産
ニューヨーク州連邦倒産裁判所、連邦倒産法第15章に基づく外国倒産処理手続の承認の取消しおよび同手続の却下を求める申立てを棄却
New York Bankruptcy Court Denies Motion to Terminate Chapter 15 Recognition and Dismiss Chapter 15 Case
米国第九巡回区連邦控訴裁判所、倒産手続において引受けおよび譲渡が認められない「金融的便宜(financial accommodations)」の拡大的解釈を示す
The Ninth Circuit's Expansive Reading of "Financial Accommodations" that Cannot Be Assumed or Assigned in Bankruptcy
ペンシルベニア州連邦地方裁判所、倒産手続における特許ライセンス契約の譲渡可能性を判断するにあたり、「仮定テスト(hypothetical test)」(倒産状態にない法律関係を仮定して、相手方の同意の要否に基づき判断する手法)を採用
Pennsylvania District Court Applies "Hypothetical Test" in Determining that Patent License Agreement Is Assignable in Bankruptcy
サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護
カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)和解、消費者の権利行使を妨げたオプトアウト手続の不備を是正対象に
CCPA Settlement Targets Gaps in Opt-Out Processes That Prevented Consumers From Fully Exercising Rights
欧州委員会、EUのサイバー・レジリエンス強化に向けサイバーセキュリティ法改正案を提案
EU Commission Proposes Revised Cybersecurity Act to Bolster EU Cyber Resilience
ESG (環境・社会・ガバナンス)
米国連邦裁判所、オレゴン州の拡大生産者責任法(EPR法)の施行を停止:企業が知っておくべき事項
A Federal Court Paused Oregon's EPR Law: What Companies Should Know
EU、オムニバス法案において簡素化されたESG規則を公表
EU Publishes Pared Back ESG Rules in the Omnibus
プラスチック関連トピックのアップデート(2026年2月号)
Plastics Updates - February 2026
フィナンシャル・マーケット
米国証券取引委員会(SEC)、2026年開示規制改正に係る優先事項を公表
SEC Outlines 2026 Disclosure Reform Priorities
米国証券取引委員会(SEC)、トークン化証券に関連するタクソノミーについての見解を提示
SEC Staff Provides Its Views on Taxonomies Associated With Tokenized Securities
訴訟・紛争解決
シンガポール、仲裁の前提条件の不遵守の効果について、英国および香港と足並みを揃える
Singapore Aligns With England and Hong Kong on Preconditions to Arbitration
ヘルスケア・ライフサイエンス
米国保健福祉省(HHS)、臨床医療におけるAI導入加速に向けた政策方針を示唆
HHS Signals Policy Direction to Accelerate Adoption of AI in Clinical Care
Vital Signs:デジタルヘルス法アップデート|2026年冬号
Vital Signs: Digital Health Law Update | Winter 2026
保険補償
デラウェア州最高裁判所、証券訴訟の和解に対する役員賠償責任保険(D&O保険)の「対価の引き上げ(Bump-Up)」免責条項の適用を否定
Delaware High Court Rejects Application of D&O Policy's "Bump-Up" Exclusion to Securities Claim Settlement
上訴審訴訟
米連邦最高裁判所、気候変動訴訟に係る連邦法の優先権について弁論を開く
U.S. Supreme Court to Hear Climate Change Preemption Case
労働・人事
2025年英国雇用権利法に基づく労働法制の主要改正点
Key Changes to Employment Laws Under the New UK Employment Rights Act 2025
証券訴訟・証券法規制執行
証券監督者国際機構(IOSCO)の報告書、取引参加者がフロントランニング規制に関しインサイダー取引の調査対象となることを回避するための指針を提示
IOSCO Report Provides Guidance that Can Help Dealers Avoid Insider Trading Scrutiny
証券関連訴訟年次レビュー(2025年版)
2025 Securities Litigation Year in Review
税務
エネルギー税額控除に係るOne Big Beautiful Bill 法(OBBBA)上の重要支援制限に関する初のガイダンスを公表
Initial Guidance Issued on the OBBBA Material Assistance Restrictions for Energy Tax Credits
第45Z条クリーン燃料生産税額控除に関する規則案を公表
Proposed Regulations Issued on the Section 45Z Clean Fuel Production Credit
テクノロジー
欧州委員会、デジタル・ネットワーク法に関する規則案を公表
European Commission Publishes Proposal for a Regulation for the Digital Networks Act
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