米連邦最高裁判所、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置を無効と判断
Learning Resources, Inc. v. Trump事件において、米連邦最高裁判所は、大統領が国際緊急経済権限法(「IEEPA」)に基づき関税を賦課する権限を有しないとの判断を下しました。
2026年2月20日(金)、米連邦最高裁判所は、6対3の多数決により、IEEPAが大統領に関税を課す権限を付与していないと判示しました。本判決により、中国、カナダ、メキシコに対する関税および相互関税を含む、IEEPAに基づく関税は無効となります。なお、これらの関税により、これまでに約1,750億ドルの歳入があったと報じられています。
この多数意見はロバーツ首席判事が執筆しました。同判事は、ゴーサッチ判事およびバレット判事とともに、これらの関税は議会が有する歳入権限に関わるものであり、かつ、経済的・政治的に重大な問題に関わるものであると指摘しました。その上で、主要問題ドクトリン(major questions doctrine)を適用し、IEEPAには関税の賦課に係る議会の権限を委任する旨の明確な規定が存在しないと説示しました。ケイガン判事は一部同意意見において、委任の欠如は法律の文言自体から明らかであると述べ、ソトマイヨール判事およびジャクソン判事が当該意見に賛同しました。これらに対し、カバノー判事は、IEEPAの文言上、関税の賦課権限は明確に委任されていると主張する反対意見を執筆し、トーマス判事およびアリト判事がこれに賛同しました。
また、米連邦最高裁判所は、IEEPA関税に対する異議申立てについては国際貿易裁判所(Court of International Trade)が専属的管轄権を有すると判断しました。ただ、救済措置については判断が示されておらず、IEEPAに基づき納付済みの関税の還付については、未解決のままになっています。当日(20日)の夜、トランプ政権は「特定の関税措置の終了」と題する大統領令を発出して、IEEPA関税の徴収を事実上終了し、関係行政機関に対し可及的速やかにIEEPA関税の徴収を停止するよう指示しました。
トランプ大統領は、他の法的根拠に基づく新たな関税措置を導入する意向を表明しています。同日夜、トランプ政権は「国際収支の根本的問題に対処するための一時的輸入課徴金の賦課」と題する大統領布告を公表しました。同布告は、1974年通商法第122条に基づき、2月24日以降一定の例外を除くすべての輸入品に対し10%の従価税を課すものです。さらに、トランプ大統領は、翌21日(土)、この従価税率を第122条で認められる上限である15%に引き上げると発表しました。
本アラートは、米国の関税政策に関する重要なトピックであり、米国市場において事業を展開する日本企業や米国向けに製品を輸出する日本企業にも大きな影響を有すると考えられることから紹介する次第です。詳細は、Jones Day Alert “United States Supreme Court Invalidates IEEPA Tariffs”(オリジナル英語版)も、あわせてご参照ください。米国では、本判決以後も還付の手続や範囲等をめぐる裁判が進行中であり、この分野の最新情報にご関心のある方は、当事務所の担当者までご連絡ください。
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