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ジョーンズ・デイ・ニュースレター:Global Legal Update | Vol. 57

ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40以上のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。

政府規制

基幹技術に関するCFIUSの義務的審査につき、輸出管理に関する基準を用いることとする規則案
CFIUS To Base Mandatory Critical Technology Reviews on Export Control Criteria

米国財務省は、近時、基幹技術に対する外国投資のうち、対米外国投資委員会(以下「CFIUS」といいます。)による義務的審査の対象となるものの範囲を変更し、又は一定の場合には拡大する旨の規則案を公表しました。

当該規則案は、基幹技術を有する米国企業に対する外国投資にかかるCFIUSの義務的審査を、既存の輸出管理規制の枠組みに合致させるものであり、当該規則案が施行された場合、新たな類型の投資及び外国投資家が、CFIUSによる義務的審査の対象に加わることになります。

当該規則案が施行された場合、当事者は、取引の初期段階におけるデュー・ディリジェンスにおいて、従前のような対象会社である米国企業の業種に基づく分析ではなく、当該取引における外国投資家に対して、対象会社の機微技術を提供する場合に適用される輸出規制を把握することにその焦点を移行することが求められることになります。

オランダ政府が計画するCOVID-19危機を考慮した遡及的な対内投資の審査
Dutch Government Plans Retroactive Foreign Investment Screening in View of COVID-19 Crisis

2020年6月2日、オランダ政府は、同年第4四半期に国会に提出し、採択予定の立法案に関して、同日以降に実施される対内投資を遡及的に審査する計画を発表しました。オランダ政府は、立法案の遡及適用の理由として、COVID-19危機及びCOVID-19危機を踏まえた投資審査の強化を求める直近の欧州委員会のガイダンスを挙げています。

2019年末、オランダ政府は、国会に対し、より包括的に対内直接投資を審査する体制を規定する立法案を採択する意向を伝えました。他の EU 加盟国とは異なり、オランダでは現在特定のセクター(例:ガス・電力)毎に対内直接投資を審査する体制を採用しているため、立法案が採択されればオランダにおける対内直接投資の審査が行われる可能性が大幅に拡大します。また立法案は、重要インフラを提供する企業やハイエンドのセンシティブな技術に積極的に取り組む企業への投資を対象とし、投資に先立ち、主務大臣がリスク分析を実施することを可能にするための届出義務を規定しています。

立法案の発効後は、2020 年 6 月 2 日以降に実施される立法案の対象となる対内投資が事後審査の対象となり、最終的には取引の巻き戻しを含む措置が課せられる可能性があります。そのため、この立法案の遡及適用により、投資家においては、現在係属中の取引や提案されている取引について、現時点において既に慎重に検討することが求められているといえます。

英国によるCOVID-19パンデミックに対応した対内直接投資規制の強化
United Kingdom Tightens Foreign Direct Investment Controls in Response to the COVID-19 Pandemic

英国は、COVID-19パンデミック対策に重要な企業をその対象に含めるために、対内直接投資の審査規制の範囲を拡大しました。さらに、(i) AI技術、(ii) 暗号認証技術、(iii) 先端材料の分野への投資を審査するための要件の閾値を引き下げました。

上記の変更により、英国の既存の対内直接投資の審査規制の範囲が拡大・深化し、より多くの対内直接投資が審査の対象となります。

上記の改正により影響を受ける事業を展開する英国の顧客を持つ企業への投資を検討している場合は、対内直接投資の審査の回避や範囲の最小化を図るために早い段階での英国政府との連携を検討すべきです。

調査・企業犯罪

米国司法省による「企業コンプライアンスプログラム評価」ガイダンスの改訂
DOJ Updates Its "Evaluation of Corporate Compliance Programs" Guidance

米国司法省は、同省の検察官に向けた「企業コンプライアンスプログラム評価」ガイダンスを改訂しました。この改訂版は、企業のコンプライアンスプログラムの実効性を評価する際に米国司法省が重点を置く要素に関して追加的な見解を規定しています。企業は、自社の既存のコンプライアンスプログラムを、このガイドライン及び他のガイドラインと比較するとともに、事業活動の観点から類似のリスク要因を抱える企業のベストプラクティスの観点から評価することにより、自社のコンプライアンスプログラムの実効性を高めることが可能となるものと考えられます。


その他、2020年6月は以下の情報をAlert/Commentary としてお伝えしています。

独占禁止法・競争法

欧州委員会がデジタル分野における調査・規制権限の拡張を模索
European Commission Considers Expanding Investigative and Regulatory Authority in Digital Sector

EU裁判所、欧州委員会による買収阻止のハードルを上げる
EU Court Raises Bar for Commission to Block Certain Mergers

フィナンシャル・マーケット

欧州委員会による欧州レベルでのマネー・ロンダリング規制当局の設立及び統一規則の提案
European Commission Proposes European AML Supervisor and Single Rulebook

欧州諸国におけるCOVID-19に関連する政府支援策
Government Support Measures Related to COVID-19 for European Corporates

買収及び譲渡に関する財務上の開示義務を改善するSECの新規則
SEC Improves Financial Disclosure Requirements for Acquisitions and Dispositions

商事・不法行為訴訟

COVID-19に関する権利放棄条項:利点と落とし穴
COVID-19 Waivers: The Benefits and the Pitfalls

事業再編・倒産

COVID-19危機において倒産手続が棚上げに
Mothballing Bankruptcy Cases in the COVID-19 Crisis

Taggart判決後~第9巡回区裁判所がオートマチック・ステイにも「疑いの公正な根拠の不存在」の基準が適用されると判断
Post-Taggart, Ninth Circuit BAP Holds That "No Fair Ground of Doubt" Standard Applies to Automatic Stay Violations

Jevic判決により禁止されていない申立前の債務を弁済するためのキャッシュコラテラルの使用
Use of Cash Collateral to Pay Prepetition Debt Not Prohibited by Jevic

サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護

カリフォルニア州司法長官がCCPA規則最終案をOffice of Administrative Lawに提出
California Attorney General Submits Final Proposed CCPA Regulations to Office of Administrative Law

従業員福利厚生・役員報酬

ESG投資におけるS(社会)要素の重視
Enhanced Focus on the "S" in ESG Investing

従業員持株制度:全世界的動向について
Equity Plans: Global Developments

エネルギー

建設プロジェクト及び紛争:COVID-19によるロックダウンの先を見据えて(第三部)
Construction Projects and Disputes: A Look Beyond the Lockdown, Part III

政府規制

ドイツ、COVID-19パンデミックを受けて対内直接投資規制を強化
Germany Tightens Foreign Direct Investment Control in Light of COVID-19 Pandemic

米国大統領、給与保護プログラム(PPP)の修正法案に署名
President Signs Amendments to Paycheck Protection Program Into Law

保険補償

英国における一般的な保険証券の文言に基づきCOVID-19に関連する保険金請求を行うことが可能か否かにつき、英国裁判所の判断が下されることに
English Court to Provide Guidance on Whether Common UK Insurance Policy Wordings Cover COVID-19 Claims

知的財産

FDAがオレンジブックにおける特許収載実務の見直しに着手
FDA Launches Review of Orange Book Patent Listing Practices

調査・企業犯罪

イタリア最高裁判所: 外国企業に利益を与えることが行政責任(準刑事責任)を生じさせると判断
Italian Supreme Court: Crimes Benefiting Foreign Companies Trigger Administrative (Quasi-Criminal) Liability

証券訴訟・証券法規制執行

SECによる不正利益の支払請求を許容する旨の米国最高裁の判断
U.S. Supreme Court Allows Profits-Based SEC Disgorgement Awards

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