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Global Legal Update

Global Legal Update Vol. 124 | 2026年2月号

ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。

独占禁止法・競争法

米国における企業結合の届出基準額が増額
Increases to U.S. Merger Notification Thresholds Announced

連邦取引委員会は、2026年1月14日、ハート・スコット・ロディノ法(以下「HSR法」)における届出基準額の増額を公表しました。この基準は、連邦政府に対する事前届出を必要とする企業結合取引を判断するためのものです。増額後の基準は、連邦官報に掲載された日から30日後の2026年2月から適用され、2027年初めまで効力を有する見込みです。

また、連邦取引委員会は、新たな届出手数料および手数料算定基準も同日から適用されるとしています。新基準の適用日以降にクロージングが予定されている取引については、調整後の基準額および手数料を前提に、HSR法に基づく届出要否の分析を再確認することが望ましいといえます。

これらのHSR法上の基準変更と同時に、連邦取引委員会は、一定の役員兼任を禁止するクレイトン法第8条に適用される基準額についても改定した旨を公表しました。

HSR法の調整後基準

取引規模要件:HSR法に基づく届出は、取引の結果として買収者が取得する被買収者の議決権付有価証券、非法人持分または資産の価額が133.9百万ドルを超える場合(2025年は126.4百万ドル超でした)に必要となる可能性があります。取引規模が133.9百万ドル超535.5百万ドル以下の場合には、下記の当事者規模要件も満たす必要があります。取引規模が535.5百万ドルを超える場合には、当事者規模要件を満たすか否かにかかわらず、HSR法に基づく届出が必要となります。

当事者規模要件:買収者または被買収者のいずれかの年間純売上高または総資産が267.8百万ドル以上であり、かつ他方当事者の年間純売上高または総資産が26.8百万ドル以上である場合、当事者規模要件を満たします(2025年は、それぞれ252.9百万ドルおよび25.3百万ドルでした)。ただし、被買収者が製造業を営んでいない場合には、被買収者の総資産が26.8百万ドル以上、または年間純売上高が267.8百万ドル以上でない限り、当事者規模要件を満たしません。

基準の変更は、大要下表のとおりです。

Table comparing 2025 and 2026 U.S. merger notification size-of-transaction and size-of-person thresholds.

連邦取引委員会は、新しい届出基準の施行と同時に、特定のHSR法に基づく届出手数料および届出手数料の算定基準についても調整する旨を公表しました。届出手数料は、届出対象となる取引規模に基づいて算定されます。基準の変更は、大要下表のとおりです。

Table summarizing 2025 and 2026 U.S. merger notification filing fees and applicable transaction size ranges.

HSR法に基づく届出義務には、一定の例外規定が存在します。HSR法が関係する可能性のある取引については、適格な弁護士に相談することが望ましいといえます。

役員兼任基準及び民事制裁金の増額

2026年1月14日、連邦取引委員会は、クレイトン法第8条に基づく役員兼任禁止に関する管轄基準額も引き上げました。同条は、純資産額が54,402,000ドルを超える競争関係にある会社間において、同一人が役員または取締役を兼任することを禁止しています。ただし、いずれか一方の会社の競争関係にある事業に係る売上高が5,440,200ドル未満である場合には、当該兼任は禁止されません。

テクノロジー

欧州委員会、AIラベリングと透明性に関する行動規範案を公表
European Commission Publishes Draft Code of Practice on AI Labelling and Transparency

EUのAI法第50条は、ディープフェイクや一般向けに情報を発信する特定のAI生成出版物を含むAIにより生成および操作されたコンテンツに対して新たな透明性義務を導入しています。これらの義務は2026年8月から適用されます。

2025年12月17日、欧州委員会はEU AIオフィスを通じて、AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範のファーストドラフトを公表しました。この行動規範は、生成AIシステムのプロバイダーやデプロイヤーに対し、第50条の遵守方法に関する実践的な指針を提供することを目的としており、プロバイダーに適用される義務とデプロイヤーに適用される義務を区別して規定しています。

プロバイダーは、テキスト、音声、画像、およびビデオの各フォーマットでシステムが作り出す生成物が以下の要件を満たすことが求められます。

  • 機械的に読み取ることができる方法でマーキングされ、人工的に生成または操作されたものとして検出可能であること、および
  • 最先端、コンテンツごとの制約、実装コストを考慮した、効果的で相互運用性があり堅牢かつ信頼性の高い技術的ソリューションによって支えられていること

行動規範案は、あらゆる場合において単一の技術的解決策が第50条の要件を満たすことができるという考えを明確に否定しています。代わりに、削除や操作に対する耐性を高めるために、可視的な開示と不可視または機械的に読み取ることができる技術(メタデータや透かしなど)を組み合わせた多層的なアプローチを奨励しています。

技術的な対策に加え、プロバイダーは以下の内容を含む組織上の安全策も実施することが期待されています。

  • ラベリングソリューションの効果をテスト、監視、および定期的に評価するための内部フレームワーク、
  • 選択した措置の堅牢性と制限を示す文書、および
  • ラベルの削除や操作に関する契約上またはポリシーに基づく禁止事項

行動規範案は、生成AIシステムのデプロイヤーに対して、エンドユーザーやオーディエンスとの近接性を反映した明確な義務を課しており、以下のことが期待されています。

  • AI生成コンテンツには、おそくとも自然人がそのコンテンツに初めて触れた時点で明確にラベルが付けられていること、
  • そのコンテンツについて有意義な人的審査が行われ編集責任が課される場合を除き、公共の利益に関する事項について一般向けに情報を提供する目的でテキストが生成または大幅に改変された場合、AIの使用を開示すること、および
  • ディープフェイクやAI生成または操作されたテキスト出版物を公表するための共通アイコンを適用し、初回公表時に可視的かつ一貫性のある方法で配置すること

AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範は、自主的なルールですが、規制当局や裁判所がAI法の透明性義務の遵守を評価する際の重要な基準となる可能性があります。2026年3月に次のドラフトの公表が予定されており、最終版は、2026年8月のAI法第50条の発効に先立つ、同年6月に制定される予定です。

その他、2026年1月は以下の情報をAlert/Commentary 等としてお伝えしています。

独占禁止法・競争法

中国の垂直的独占協定に関するセーフハーバーがついに導入 — 一部修正あり
China's Safe Harbor for Vertical Monopoly Agreements Finally Lands—With Some Tweaks

ESG (環境・社会・ガバナンス)

EU法にいう、ファンドの投資戦略が「公正かつ明確で誤解を招かない」とはどういう場合か?
What Does "Fair, Clear and Not-Misleading" Mean in the Context of Fund Strategies?

ドイツで加速する有機フッ素化合物(PFAS)に係る規制と執行
PFAS Regulation and Enforcement Accelerate in Germany

EUの改正産業排出指令:環境マネジメントシステムの義務化、厳格化された制限、大幅に増大した制裁及び責任のリスク
Industrial Emissions Directive 2.0: Mandatory EMS, Stricter Limits, Materially Higher Sanction and Liability Risks

フィナンシャル・マーケット

英国、金融サービス・市場法(FSMA)に基づく暗号資産規制制度を公表
United Kingdom Unveils FSMA-Based Regulatory Regime for Cryptoassets

政府規制

海底資源採掘:法的課題への対応
Deep-Sea Mining: Navigating Legal Challenges

ヘルスケア・ライフサイエンス

欧州医薬品庁(EMA)と米国食品医薬品局(FDA)、医薬品開発における適正AI活用原則で連携
EMA and FDA Align on Good AI Practice in Drug Development

知的財産

営業秘密のグローバル最新動向:2025年の主要トピック
Global Trade Secret Update: Key Developments in 2025

調査・企業犯罪

フランス、企業内弁護士の助言に関する限定的な秘匿特権制度を創設
France Establishes a Restricted Confidentiality Regime for In-House Legal Advice

虚偽請求取締法(FCA)に基づく徴収額が2025会計年度に過去最高の68億ドルに到達
False Claims Act Recoveries Reach Record $6.8 Billion in Fiscal Year 2025

労働・人事

カリフォルニア州における2025年の労働・人事に関する立法の振り返り
A Review of 2025 Labor & Employment Legislation in California

2025年の米国雇用機会均等委員会(EEOC)の動向と今後の見通し(Law 360
A Look At EEOC Actions In 2025 And What's Next (Law 360)

不動産

英国の2025年都市計画・インフラ法(1):都市計画法編
UK's Planning and Infrastructure Act 2025: Planning Aspects

英国の2025年都市計画・インフラ法(2):インフラ法編
UK's Planning and Infrastructure Act 2025: Infrastructure Aspects

トランプ大統領が戸建住宅への機関投資家の投資規制に関する大統領令を発出
President Trump Issues Executive Order on Institutional Investment in Single-Family Homes

証券訴訟・証券法規制執行

米国証券取引委員会(SEC)による財務報告・開示に関するエンフォースメント:2025年度末アップデート
SEC Enforcement in Financial Reporting and Disclosure: Fiscal 2025 Year-End Update

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