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Global Legal Update

Global Legal Update Vol. 91 | 2023年5月号

ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。

知的財産

生成AIが生み出す興奮―そして著作権の懸念
Generative AI Generates Excitement—and Copyright Concerns

過去数年間、AIはニュースの見出しを独占しており、AIの可能性と危険性についての認識と関心が高まっています。最近では、生成系AIの「チャットボット」に関する話題が非常に盛り上がっています。これらのAIシステムは、人間のような会話レベルでユーザーと関わり、またユーザーによる最も単純な入力によっても複雑なコンテンツを生成するように見えるためです。生成AIプラットフォームを使用して、マーケティング資料、翻訳、ソースコードなどの様々なコンテンツを作成する従業員が増えています。

生成AIプラットフォームの使用により、成果物の権利、侵害に関する検討事項(成果物の使用と基礎となるモデルのトレーニングの両方)、および生成AIを使用して作成したコンテンツの著作物性など、さまざまな著作権の問題が発生します。

生成AIはさらに普及し、さまざまな業界の従業員が使用するツールになることが予想されます。企業は、これらのプラットフォームを採用する場合、または従業員が会社に代わってこれらのツールを使用できるようにする場合、特に成果物がどのように使用されているか、または他の企業情報に組み込まれているかについて注意する必要があります。

3つのポイント

  1. 生成AIツールを使用してコンテンツを作成しようとしている個人および組織は、そのツールに適用される使用条件を理解する必要があります。この使用条件は、ツールに関連するWebサイトで入手できる場合があります。特に、その使用条件は、従業員が雇用主に代わって、または業務上そのようなツールを使用する場合その組織に影響を与える可能性があります。
  2. 生成AIツールのユーザーは必ずしも成果物の権利を保有するとは限らず、成果物が第三者の著作権を侵害しているとの申立てを受ける可能性があります。同様に、国によっては、著作権で保護された素材を使用して生成AIモデルをトレーニングすることにより、潜在的な著作権侵害の懸念が生じます。
  3. 生成AIツールのユーザーは、米国著作権局が最近発行した、AIによって生成された素材を含む作品に関するガイダンスに留意する必要があります。特に、ユーザーは、プロンプトを提供したという事実だけに基づいて成果物が著作権により保護されるわけではありません。成果物が著作権保護の対象となるためには、人間が著作したという側面が作品に含まれている必要があります。たとえば、創造的な人間の著作性を反映する態様で生成物を十分に変更する場合などです。

その他、2023年4月は以下の情報をAlert/Commentary としてお伝えしています。

独占禁止法・競争法

効果に基づくアプローチは減少へ?欧州委員会が優越的地位の濫用のEU枠組みを修正する行動をとる
Towards a Less Effects-Based Approach? European Commission Takes Action to Amend EU Framework on Exclusionary Abuses of Dominance

サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護

連邦取引委員会、消費者が定期的なサブスクリプションやメンバーシップのキャンセルを容易に行うことを可能とする新しい規則を提案
Federal Trade Commission Proposes New Rule Governing Consumers' Ability to Cancel Recurring Subscriptions and Memberships

アイオワ州、包括的なデータプライバシー保護法を制定する6番目の州になる
Iowa Becomes Sixth State to Enact a Comprehensive Data Privacy Law

フィナンシャル・マーケット

2023年3月、米国バイデン大統領が2023年度大統領経済報告を発表、デジタル資産に初めて独立の章を設ける(但し、同資産には懐疑的な内容)
Economic Report of the President to the Crypto Industry: Thanks, But No Thanks

訴訟・紛争解決

グリーンウォッシング(偽装的な環境配慮)の状況:イギリス及びEUにおける既存及び成立見込み法令
Greenwashing Landscape: Existing and Forthcoming Legislation in the United Kingdom and European Union

ヘルスケア・ライフサイエンス

ワシントン州、包括的なヘルスデータ保護法を制定する最初の州になる
My Health, My Data: Washington Enacts First State Comprehensive Health Privacy Law

連邦第6巡回区控訴裁判所、反キックバック法の適用範囲を限定的に判断
Sixth Circuit Narrows Scope of Anti-Kickback Statute

知的財産

生成AIとオープンソースソフトウェアライセンス要件
Generative Artificial Intelligence and the Requirements of Open Source Software Licenses

調査・企業犯罪

欧州連合司法裁判所がEUの会社の実質的支配者に関する情報へのアクセスを制限
EU Court Limits Access to Information on Beneficial Owners of EU Companies

フランス腐敗行為防止規制当局及びフランス国家金融検察庁が内部腐敗防止調査に関する最新ガイドを公開
French Anticorruption Agency and French National Financial Prosecutor's Office Publish Updated Guide on Internal Anticorruption Investigations

労働・人事

新しい連邦法(Pregnant Workers Fairness Act)による妊娠中及び育児中の労働者の保護拡大
New Federal Laws Provide Expanded Protections for Pregnant and Nursing Workers

規制対象の拡大と退職金の増加及び通知期間の延長を盛り込んだニュージャージー州のWARN法(労働者調整・再訓練予告法)の改正が発効
New Jersey WARN Act Amendments Expanding Coverage and Increasing Severance and Notice Requirements Now in Effect

シンガポール:海外からの高度専門職のための就労ビザ(EP)の新しい発給条件及び労働者の権利の拡大
Singapore: New Immigration Criteria for Foreign Professionals and Expanding Rights for Employees

ニューヨーク市が人材採用の自動化に関するツールについて最終規則を公表
New York City Releases Final Rules on Automated Employment Decision Tools

証券訴訟・証券法規制執行

米国連邦最高裁判所、米国証券取引委員会(SEC)等の行政審判手続等の結論を待たずに、連邦地方裁判所において行政当局の権限合憲性に対する司法判断が可能である旨の判決を行う
U.S. Supreme Court Paves the Way for Challenging Agencies' Structure in Federal District Court

税務

ブラジル:租税特赦(タックス・アムネスティ)プログラムにより税務行政手続に関する不利益変更を緩和
Brazilian Tax Amnesty Program Temporarily Mitigates Unfavorable Change to Tax Proceedings

タックスクレジットの販売:インフレ抑制法の下で再生可能エネルギー及び炭素削減プロジェクトの資金調達に新たな可能性が与えられる
Tax Credits for Sale: Opportunities for Financing Renewable Energy and Carbon Reduction Projects Under the Inflation Reduction Act

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