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Jones Day One Firm Worldwide

Global Legal Update Vol. 77 | 2022年3月号

ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40以上のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。

政府規制

米国上院がサプライチェーンにおける強制労働の実態を明らかにするため企業監査を義務付ける法案を提出
Senate Introduces Bill Requiring Corporate Audits to Uncover Forced Labor Practices in Supply Chains

2022年2月3日、共和党と民主党の上院議員は、特定の上場企業に詳細な年次監査の実施と連邦政府への結果開示を義務付けることで、企業のサプライチェーンにおける強制労働の利用を防止することを目的とする法案を提出しました。この取り組みは、議会において同様に超党派の支持を集めた、2021年12月にバイデン大統領がウイグル強制労働防止法に署名したことに続くものです。

2022年スレイブフリー事業認証法(以下、「本法」)は、特定の対象事業者に対して、サプライヤー、二次サプライヤー、オンサイトサービサーを含めた自らの事業において強制労働の証拠がないか毎年監査することを義務付けるものです。本法は「対象事業者」を広く定義しており、1933年証券法に定義される発行体で年間売上が5億ドル超のものが含まれます。

監査の内容は、連邦法としては異例なほど細かく、部門をまたがる従業員や経営陣へのインタビュー、人事ファイル及び外部取引先との契約書等の業務文書の確認が求められています。監査結果は、会社のウェブサイトに「目立つように」掲載され、米国労働省(以下、「DOL」)に報告され、審査されます。その後、DOLは、同法を遵守しなかった企業や強制労働の懸念を報告した企業を特定する報告書を議会に提出しなければなりません。さらに、最高経営責任者は、本法の遵守と監査報告書が企業のサプライチェーンの状況を正確に反映していることを個人として証明しなければなりません。本法は、DOLにコンプライアンス違反に対する民事賠償と懲罰的賠償をそれぞれ1億ドルと5億ドルまで追求する権限を与えており、企業幹部が故意に虚偽の証明を行った場合には、民事責任と刑事責任にさらされる可能性があります。

この法案は、議会を通過する過程で大幅に変更される可能性があります。可決された場合には、DOLは施行規則を作成することになります。

超党派の支持を得たこの法案は、国際的なサプライチェーンを持つ大企業に新たなコンプライアンス上の義務を課すものであり、当該企業のサプライチェーンに組み込まれている日本企業にも影響が生じることが予想されます。


その他、2022年2月は以下の情報をAlert/Commentary としてお伝えしています。

独占禁止法・競争法

欧州連合による気候、環境保護及びエネルギーのための公的補助金に関する改訂ガイドラインの採択
EU Adopts Revised Guidelines on State Aid for Climate, Environmental Protection and Energy

商事・不法行為訴訟

米連邦最高裁判所における初の黒人女性の裁判官候補の指名について(*Bloomberg Lawより転載)
A View on the SCOTUS Nomination From One First to Another (Bloomberg Law)

サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護

英国高等法院、データ侵害責任の評価に関する狭義のアプローチを確認
English High Court Confirms Narrow Approach to Assessment of Data Breach Liability

欧州委員会、データへのアクセスと共有を促進する法案を提案
European Commission Proposes Legislation Facilitating Data Access and Sharing

イギリス、第三国へのデータ移転に関する新たな標準契約条項を提案
UK Proposes New Standard Contractual Clauses for Data Transfers to Third Countries

フィナンシャル・マーケット

「米国の観点からの域外適用可能性」(グローバル調査に関する実務家向けガイド(The Practitioner's Guide to Global Investigations)(第6版)
"Extraterritoriality: The US Perspective," The Practitioner's Guide to Global Investigations - Sixth Edition

「取引所」の定義を大幅に拡大するとともに代替的取引システム(Alternative Trading System)に関するレギュレーションATSを変更するための米国証券取引委員会の規則改正案
SEC Proposes to Broadly Expand the Definition of an "Exchange" and Amend Regulation ATS

訴訟・紛争解決

気候変動と国家対投資家の紛争解決
Climate Change and Investor-State Dispute Settlement

EUの気候変動訴訟:オランダ
Climate Change Litigation in the European Union: The Netherlands

イタリアの民事訴訟制度の改革
Italy to Revamp Civil Justice System

政府規制

ラテンアメリカで再び資源国有化の波:投資を守るために
Another Sweeping Wave of Resource Nationalism in Latin America: How to Protect Your Investment

米国環境保護庁が自動車の温室効果ガス排出基準を厳格化
EPA Issues Stringent Greenhouse Gas Emissions Standards for Passenger Cars and Light Trucks

米国第9巡回裁判所がカリフォルニア州のネットワーク中立法を認め、連邦通信委員会の動きに注目が集まる
Ninth Circuit Approves California's Net Neutrality Law, Shifts Focus to FCC

ヘルスケア・ライフサイエンス

FDA(アメリカ食品医薬品局)が医薬品卸売業者と第三者物流業者に対する国家規格を提案
FDA Proposes National Standards for Wholesale Drug Distributors and Third-Party Logistics Providers

知的財産

申請におけるケアレスミスは著作権登録を無効とするものではない
Honest Application Mistakes Do Not Invalidate Copyright Registration

プライベート・エクイティ

米国証券取引委員会がプライベートファンドのアドバイザーを対象とした規制案を公表
SEC's Proposed Rules Target Advisers to Private Funds

証券訴訟・証券法規制執行

米国証券取引委員会の公益通報者プログラムに関する規則改正案
SEC Announces Proposed Amendments to Whistleblower Program Rules

米国証券取引委員会において、企業による多大な協力を評価の上、罰金を課すことなく当該企業との間で詐欺事件に関する和解を行ったことを公表
SEC Announces Settlement of Fraud Case Without Requiring Financial Penalty in Recognition of Company's Substantial Cooperation

2021年における証券訴訟の年次レビュー
2021 Securities Litigation Year in Review

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