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Global Legal Update

Global Legal Update Vol. 93 | 2023年7月号

ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。

サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護

中国、個人情報域外移転標準契約届出ガイドラインを公布
China Issues Guidance on Filing of the Standard Contract for Cross-Border Transfers of Personal Information

2023年5月30日、中国サイバースペース管理局は、個人情報域外移転標準契約届出ガイドライン(以下「ガイドライン」)を公布し、同年6月1日に施行しました。

ガイドラインは、同じく2023年6月1日に施行された個人情報域外移転標準契約弁法に基づく標準契約の要件と届出手続きに関する主要な詳細を示しています。

データ取扱者が移転する個人情報の量又は性質から安全評価を受けることを求められない限り、標準契約は中国から個人情報を域外に移転する場合に利用することができます。

データ取扱者は、標準契約の効力発生日から10営業日以内に省レベルの中国サイバースペース管理局に標準契約及び必要資料を届け出る必要があります。

ガイドラインには、以下の内容を含む届出のための必要資料のひな型が示されています。

  • 国境を超える処理活動のあらゆる側面についてかなり高いレベルの詳細を求める個人情報保護影響評価、及び
  • 特に、全ての個人情報の取扱いは中国法を遵守していること、提出資料は正確かつ完全であること、及び個人情報保護影響評価は届出日の3か月までに完了し、完了後重要な変更はないことを個人情報取扱者が確認する誓約書

個人情報域外移転標準契約弁法の下では中国サイバースペース管理局の承認は必要ありませんが、ガイドラインには、中国サイバースペース管理局が全ての届出を審査し、届出を受理する前に却下する裁量を有していると述べられています。届出を却下する場合、中国サイバースペース管理局は理由を示さなければならず、また補充資料を求めることができます。届出が最終的に却下された場合、異議申立ての手続きはありません。中国サイバースペース管理局の審査は、提出物の完全性を確実にすることに重点が置かれると思われますが、ガイドラインはさらに実質的な審査も可能としています。

企業が域外移転を法令に適応させるために2023年12月1日まで6か月間の猶予期間が設けられています。法令を遵守しない企業は個人情報保護法に基づく罰則の対象となり、この罰則には多額の罰金や全ての個人情報の移転の停止が含まれます。

まだ法令への対応を行っていない企業は、個人情報の移転に関する混乱を防ぐために、個人情報域外移転標準契約弁法及びガイドラインの観点から既存の中国における個人情報の移転に関する取り決めを直ちに確認する必要があります。


その他、2023年6月は以下の情報をAlert/Commentary 等としてお伝えしています。

商事・不法行為訴訟

米連邦最高裁判所による虚偽請求取締法(False Claims Act)の故意要件の明確化
The U.S. Supreme Court Clarifies the Scienter Standard for False Claims Act Cases

米連邦最高裁判所による法人登録の所在地に基づく裁判管轄の認容
U.S. Supreme Court Allows Personal Jurisdiction Based on Corporate Registration

事業再編・倒産

米国の連邦倒産法第15章手続による承認と救済は外国倒産処理手続が再生から清算に移行した後に変更され得る
Chapter 15 Recognition Order and Relief Could Be Modified After Conversion of Foreign Debtor's Reorganization to Liquidation

フィナンシャル・マーケット

米国商品先物取引委員会、特定のスワップ取引を含むプライムブローカー業務につきデリバティブ・クリアリング機関への登録を要請する警告書を発出
CFTC Staff Advisory Warns That SEF Prime Brokerage Arrangements Might Require DCO Registration

米国証券取引委員会、証券を原資産とするスワップ取引につき米国証券取引法上の詐欺防止条項に係る新ルールを発出
SEC Adopts Two Rules for Security-Based Swaps (but Not Proposed Rule 10B-1)

訴訟・紛争解決

「温故知新」:気候変動訴訟に係る保険会社の免責主張の想定と対応
What's Old Is New Again: Anticipating and Defeating Insurer Coverage "Defenses" for Climate Change Litigation

イタリアにおける消費者利益の代表訴訟制度の導入
Italy Implements the First Consumers' Collective Interests Representative Action

フランスの企業内弁護士による法的助言の秘匿権の法制化の動き
A Step Toward the Confidentiality of Legal Advice Issued by French In-House Counsel

ヘルスケア・ライフサイエンス

米国保健福祉省監察総監室、薬剤給付管理者協定に関するFAQガイドラインを発行
HHS-OIG Issues FAQ Guidance Related to Pharmacy Benefit Manager Arrangements

知的財産

営業秘密と生成AI: 進化する技術状況における保護対策
Trade Secrets and Generative AI: Protective Measures In an Evolving Technological Landscape

米連邦最高裁判所、ウイスキーをあしらった犬のおもちゃは米国憲法修正第1条の保護を受けないと判断
SCOTUS Holds Whiskey-Themed Dog Toy Not Entitled to First Amendment Protection

生成AIが支援した特許の発明者性に関し引き続き残る疑問
Generative AI-Assisted Patent Inventorship Questions Remain

上訴審訴訟

米連邦最高裁判所によるアファーマティブ・アクション(少数人種優遇措置)の制限
U.S. Supreme Court Limits Affirmative Action

労働・人事

ニューヨーク州のWARN法(労働者調整・再訓練予告法)に関する規則の改正が発効
Amended New York WARN Regulations Now in Effect

M&A

豪州における外国人の資産保有に関する新たな登記制度が2023年7月1日から開始
Australia's New Register of Foreign Ownership of Australian Assets Commences on July 1, 2023

証券訴訟・証券法規制執行

米連邦最高裁判所、ダイレクト・リスティングにより取得した証券につき証券登録開示書類の虚偽記載による損害賠償を請求するためには、取得者である原告が、対象証券が開示書類に対応するものであることの証明責任を負うと判断
Supreme Court: Even in a Direct Listing, Section 11 Requires Plaintiffs to Trace Shares to Registration Statement

テクノロジー

米国商務省、情報通信技術サプライチェーンに関する最終規則を公表
Commerce Department Issues Final Rule on Information and Communications Technology Supply Chain

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