米国司法省(DOJ)、包括的な新企業エンフォースメント方針を公表
2026年3月10日、米国司法省(以下「DOJ」)は、15 U.S.C. §§ 1-38に基づく反トラスト局のリニエンシー・プログラムが利用可能である反トラスト法違反行為を除く、「DOJが取り扱うすべての企業刑事事案」を対象とする、省全体に適用される初の企業エンフォースメント方針(Corporate Enforcement and Voluntary Self-Disclosure Policy, 以下「CEP」)を公表しました。DOJによれば、同CEPは以下を目的として策定されたものです。すなわち、(1) 犯罪行為の早期かつ自主的な申告の促進、(2) 個人に対する責任追及を含む刑事執行の適時かつ実効的な実施、(3) 被害の軽減、(4) 被害者への補償及び企業の不備の是正を含む迅速な是正措置の促進、(5) 省内における一貫性の確保、並びに (6) DOJの方針及び意思決定の透明性の確保とされています。
4つの重要なポイント
- 新CEPは、反トラスト法違反の刑事事案を除くすべての連邦刑事事件について、企業の自主申告及び事案解決を規律する統一的な省全体の方針を定めるものです。これにより、企業が不正行為の自主申告の要否及び申告先となるDOJの部門を検討するにあたり、所謂「フォーラム・ショッピング」を行うインセンティブは低減するものと考えられます。
- 新CEPによる透明性の向上及び一貫性の強化は歓迎されるものですが、自主申告に関する判断は、大多数の事案において引き続き慎重かつ個別具体的な検討を要します。特に、CEPが定義する「加重事由」の存否、並びに自主申告(訴追延期につながる場合を含む。)が企業及び関係者に及ぼし得る付随的影響は、重要な考慮要素となります。
- 新CEPは刑事局の2025年CEPの構成及び内容を概ね踏襲していますが、いくつかの相違点が認められます。具体的には、(i) 誠実に自主申告を行った企業及び/又は加重事由を有する企業に対する「ニアミス」の適格性の拡大、(ii) 訴追延期の検討に際して加重事由の存在にもかかわらず自主申告を評価するよう検察官に明示した点、(iii) 「ニアミス」に該当する企業に対する罰金減額幅を一律75%から50%~75%とした点、(iv) 類似の不正行為に関する5年間の遡及制限を撤廃し、再犯の定義を拡大した点、(v) 捜査協力クレジットの付与理由について検察官に説明を求めた点、並びに (vi) 捜査協力の評価にあたり企業の財務状況を考慮する点が挙げられます。
※「ニアミス」とは、企業が全面的に協力し、不正行為について適時かつ適切な是正措置を講じたものの、CEPに基づく「自主的」申告の要件を満たさなかった場合、及び/又は刑事手続上の解決を正当化する加重事由が存在する場合において、訴追延期の適格性を有しない企業を指します。このような企業であっても、軽減措置の対象となり得ます。 - 内部通報者が既に当該行為をDOJに報告している場合であっても、企業はCEPに基づく自主申告クレジットを得ることが可能ですが、より有利な取扱いを確保する機会を逸しないよう、情報の収集及び分析を迅速に行うことが求められます。
本コメンタリーは、米国司法省による企業エンフォースメント方針に関する重要な動向であり、米国において事業を展開する日本企業のみならず、米国当局による捜査・執行の対象となり得る企業にとっても重要な影響を及ぼし得ると考えられることから、ここに紹介するものです。詳細は、Jones Day Commentary "DOJ Announces New Corporate Enforcement Policy With Broader Reach"(オリジナル英語版)をご参照ください。
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