JapanLegalUpdate

Japan Legal Update Vol. 53 | 2020年秋号

テクノロジー

立会人型の電子署名についても電子署名法第3条の推定効が及び得ることが明らかに

令和2年9月4日、「電子署名及び認証業務に関する法律」(以下、本稿において「電子署名法」といいます。)第3条の推定効に関する規定(後述)の解釈について、総務省、法務省及び経済産業省の共同名義によるQ&Aが公表されました。本Q&Aにより、サービス提供事業者が利用者の指示を受けてサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービス(いわゆる立会人型)についても、一定の要件のもとに、同条の推定効が及び得ることが明らかにされました。

(1) 電子署名の仕組み

電子契約における電子署名には大きく分けて二つの仕組みがあります。その一つは、契約当事者となる利用者本人がそれぞれ認証局から確認を受けたうえで電子証明書の発行を受け、当該利用者の秘密鍵を利用して暗号化(すなわち電子署名の作成)を行うもので、当事者署名型といわれるものです。これに対し、現在日本において普及している立会人型と呼ばれる電子署名は、契約当事者となる利用者に代わり、サービス提供事業者が自身の秘密鍵を利用して電子署名を行う仕組みのことをいいます。立会人型の場合、電子署名の証拠力は、サービス提供事業者による厳格なユーザー認証システム及び当該事業者による高度な内部管理体制によって担保されることになります。

(2) 電子署名法3条の規定及び解釈

電子署名法第3条は、電子文書(デジタル情報)について、本人(当該電子文書の作成名義人)により一定の要件を満たす電子署名が行われているときは、当該作成名義人が当該電子文書を作成したことを推定する規定です。

第3条が適用されるためには、①同条に規定する電子署名が付されていること、とりわけ、電子署名を行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより本人だけが行うことができることとなるものという要件に該当すること、及び②当該電子署名が本人の意思に基づき行われたものであること、という要件が満たされる必要があります。

これまでの総務省、法務省及び経済産業省の見解は、事業者自身が電子署名を行う立会人型では、電子署名法第3条の推定効は働き得ないというものでした。今回のQ&Aにて、立会人型の電子契約サービスであっても、一定の要件が充足される場合には、第3条の推定効が及び得ることが明らかになりました。

より具体的に言えば、立会人型のサービスに第3条が適用されるためには、暗号化を行うための符号について他人が容易に同一のものを作成することができないと認められること(固有性の要件)が必要であり、(ⅰ)利用者とサービス提供事業者の間で行われるプロセス及び(ⅱ)(ⅰ)における利用者の行為を受けてサービス提供事業者内部で行われるプロセスのいずれにおいても、十分な水準の固有性が満たされている必要があるとの解釈がされました。

(ⅰ)の要件の具体例は、利用者があらかじめ登録されたメールアドレス及びログインパスワードの入力に加え、スマートフォンへのSMS送信や手元にあるトークンの利用等当該メールアドレスの利用以外の手段により取得したワンタイム・パスワードの入力を行うことにより認証する等、利用者が二要素による認証を受けなければ措置を行うことができない仕組みが備わっている場合があげられます。(ⅱ)の要件の具体例は、サービス提供事業者が当該事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う措置について、暗号の強度や利用者毎の個別性を担保する仕組み等に照らし、電子文書が利用者の作成に係るものであることを示すための措置として十分な水準の固有性が満たされていると評価できるものである場合があげられます。

(3) Q&Aの影響

今後、立会人型のサービスについて電子署名法第3条の推定効が認められるためには、当該サービス提供事業者がユーザー認証において二要素認証機能を採用していることが、重要な要素になると考えられます。サービス提供事業者によってユーザー認証の方法は異なり得るため、具体的なサービスの選定に際しては、当該サービスを利用して締結する予定の契約書の重要度や金額といった要素も踏まえつつ、当該サービス提供事業者によって採用されているユーザー認証システム等を具体的に見たうえで、適切なサービスを慎重に選択することが必要になると思われます。

フィナンシャル・マーケット / プライベート・エクイティ

金融庁、海外投資運用業者の暫定的登録免除制度を導入

令和2年7月22日、金融庁は金融商品取引法定義府令一部改正のパブリックコメントと同時に「災害等により海外における業務継続が困難になった金融事業者が本邦で一時的に業務を行うための承認制度に関するQ&A」を発表しました。

この改正は、投資運用業者等の金融事業者が、海外において業務を継続することが困難となった場合に、日本で一定期間に限り金融商品取引法上の登録なくして金融商品取引業に従事できるようにするものです。外国において第一種金融商品取引業又は投資運用業を行う者は、災害等の事由により業務継続が困難又は困難となるおそれがある場合において、金融庁長官の承認を得て国内において業務を継続することができ、申請書の受理から3営業日程度の短期間で承認可否の判断が行われる予定です。また、業務継続が困難となる状況が発生した際に承認申請を行う時間的余裕がない場合に備え、あらかじめ申請内容につき金融庁に事前相談を行い実質的に審査を受けておくことも可能です。

登録なくして業務を行うことができる承認期間は最長3か月とされていますが、業務の継続が困難な状況が3か月で収束しない場合には、添付等を簡略化した再度の承認を申請することも可能となっています。しかし、本制度の目的である一時的な避難ではなく、長期に日本で営業する目的で利用していると認められる場合には、再度の承認は認められないこともあります。

調査・企業犯罪

消費者庁、「公益通報者保護法の一部を改正する法律」に関するQ&Aを公表

令和2年8月、消費者庁は同年6月に成立した「公益通報者保護法の一部を改正する法律」(以下、本稿において「改正法」といいます。)に関するQ&Aを公表しました。同Q&Aで消費者庁は、改正法によって事業者に新たに課された内部通報体制整備義務の内容について、通報・受付窓口の設定、社内調査・是正措置、公益通報を理由とした不利益取扱いの禁止や公益通報者に関する情報漏えいの防止、これら措置に関する内部規程の整備・運用等が想定されていることを明らかにしています。また、同義務の履行方法に関連して、グループ企業であっても個別の会社ごとに通報窓口を整備する義務を果たす必要があるとする一方、グループ会社全体としての体制整備の一環として、子会社の従業員が行う通報の窓口を親会社に設置すれば、改正法に基づく義務の履行と評価できる場合があるとしています。なお、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については内部通報体制整備義務等は努力義務となるところ、「常時使用する労働者」とは常態として使用する労働者を指し、パートタイマーであっても、繁忙期のみ一時的に雇い入れるような場合を除いて含まれることを明らかにしています。改正法の概要については、2020年夏号をご参照ください。

独占禁止法・競争法

公正取引委員会、独占禁止法改正法の施行に伴い整備する関係政令等を公表

令和2年8月28日、公正取引員会は、課徴金算定方法や課徴金減免制度の見直しを内容とする令和元年独占禁止法改正法(改正法の概要については、2019年4月号をご参照ください。)の施行に伴い整備する関係法令等を公表しました。今回公表された政令等には、独占禁止法施行令の改正、公正取引委員会の審査に関する規則の改正、課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則の改正、調査協力減算制度の運用方針の制定が含まれています。改正法の施行期日は、令和2年12月15日となっており、公表された関係法令等も同日付で効力を生じます。

知的財産

改正特許法等の一部の施行期日決定

令和2年7月28日、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令が公布され、改正特許法等のうち、知的財産訴訟において中立な技術専門家が現地調査を行う制度の創設に係る規定が令和2年10月1日から、意匠の登録手続の簡素化に係る規定が令和3年4月1日から、それぞれ施行されることとなりました。改正法の概要については、2019年4月号をご参照下さい。

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