
デジタル資産の規制:FIT21のフレームワークに基づく新たな市場構造に係る法案
2025年5月5日、米国下院の金融サービス委員会および農業委員会は、デジタル資産の規制枠組みを設けるための法案の討議草案を公表しました。本草案は、前会期の「21世紀の金融革新及び金融技術に関する法律案(FIT21)」を基礎とし、より一貫性のある規制を目指した変化をもたらそうとしています。
主要なポイント
- 管轄の明確化:本草案は、FIT21で定義された「デジタル・コモディティ(商品先物取引委員会(CFTC)により規制されるデジタル資産)」および「認定決済ステーブルコイン(permitted payment stablecoins)」が「有価証券(securities)」ではないことを再確認しています。また本草案は、関連会社による販売規制の厳格化、証券取引委員会(SEC)とCFTCによる共同の規則制定の促進とともに、発行者に対する任意の早期登録制度を導入しています。
- 開示および資金調達:デジタル・コモディティ取引所、ブローカー、ディーラーに対するCFTCへの登録要件、証券仲介業者に対するSECへの登録要件が設けられています。本草案は、FIT21よりもさらに進み、登録意向通知手続や継続的な開示義務の手続を定めています。
- 消費者保護:本草案は、デジタル資産開発者に対する開示要件を強化し、消費者保護、透明性、州レベルでの規則制定を重視しています。
- 分散型金融(DeFi):FIT21ではDeFiの除外について明示的な規定がありませんでしたが、本草案では、資産に対する一任管理権限のないノンカストディアル型DeFiプロトコルなど、一定のDeFi活動を登録や規制の対象外としています。当局の詐欺防止および相場操縦防止のエンフォースメント権限はそれぞれ維持されます。
- 分散化テスト:本草案は分散化テストを簡素化し、単一のエンティティが一方的な支配権を持たないことを求めるとともに、集中型プロジェクトにおいてトークンの10%超を保有する者の開示を義務付けています。SECによる分散化認証は、現在推進中の「成熟したブロックチェーン」のコンセプトによって置き換えられます。
- 市場アクセス:本草案は、発行者または関連企業に対する請求権を伴わないセカンダリー市場取引について証券関連法令の適用を免除しています。認定決済ステーブルコインは、ブローカー、ディーラー、代替取引システムまたは全国規模の証券取引所を通じて仲介、取引、カストディの対象とすることができます。また、FIT21にあった所得・資産制限や適格投資家(accredited investor)の確認を撤廃し、個人投資家の市場参加を促進しています。
今後の展開
本草案が成立した場合、CFTCとSECによる共同の規則制定が複数の事項について求められます。そうした中には、取引対象資産の交換所取引廃止の手続の定義や、SECによる複合デジタル資産取引に適用される規則の制定が含まれます。新法は、成立から1年以内または規則の最終版が連邦官報に掲載されてから60日後に施行されるとみられます。
本アラートは、米国におけるデジタル資産規制の新たな動向に関する重要なトピックであり、米国市場で暗号資産関連事業を展開する、または今後展開を検討している日本企業にとっても大きな影響を及ぼすと考えられることからご紹介します。なお、原文は、Jones Day Alert “New Market Structure Bill Builds on FIT21 Framework”(オリジナル英語版)をご参照ください。
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