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Jones Day One Firm Worldwide

Global Legal Update Vol. 70 | 2021年8月号

ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40以上のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。

証券訴訟・証券法規制執行

SPAC設立者が注意すべきこと:発起人株式を標的とするSEC
SPAC Founders, Beware: SEC Targets Founders Shares

2021年7月13日、SECは、合併先の事業に関する虚偽記載による連邦証券法違反の疑いで、SPAC、そのCEO及びスポンサー、さらにはSPACの合併先企業、その設立者及び前CEOに対する訴追を行いました。

SECによれば、「アーリーステージの宇宙輸送会社」である合併先企業及びその設立者は、(i)同社の宇宙区間での一度きりの試験が目標を達成できなかったのに、同社の推進技術が宇宙空間での「試験に成功」したこと及び (ii)設立者に関する安全保障上の懸念により政府の許認可を得ることが困難になる可能性の程度について、虚偽記載を行ったとされています。

さらにSECは、SPACとそのCEOが合併提案に関する届出において誤解を生じさせる記載を繰り返し、証券法及び証券取引所法に違反したとともに、合併先企業に対する十分なデュー・ディリジェンスを行わなかった旨を主張しています。この点について、SECのジェンスラー委員長は、合併先企業が交渉の中でSPACに対し虚偽を述べた可能性を認めながら、これによりSPACが株主を保護するための十分なデュー・ディリジェンスを行わなかった責任を免れるものではないとしています。合併先企業の設立者に対する手続は連邦裁判所において進行中ですが、他の被告については和解が成立しています(SECの訴追事実に対する認否はなされていません)。

注目されるのは、和解の一環として、合併先企業は700万ドル、SPACは100万ドルの民事制裁金を支払うとともに、SPACのスポンサーが合併により取得するはずであった250,000株の「発起人株式」の没収に合意した点です。「発起人株式」はSPACのスポンサーが設立の際に取得し、買収が実行された際には莫大な利益を生むこととなるため、その没収は本件における重要な展開ということができます(今後の和解におけるSECの要求の兆候とも言えます)。加えて、本件における訴追は、今年前半になされたSPACの開示に対する審査の厳格化に関するSECの声明及び2021年6月にSECによる規則制定の対象リストへSPACを含めたことを受けたものです。この内容に関しては、過去のアラート“SEC Threatens to Slap SPACs”(英語版)をご参照ください。


その他、2021年7月は以下の情報をAlert/Commentaryとしてお伝えしています。

独占禁止法・競争法

バイデン政権の競争促進のための大統領令により、様々な業種の市場への規制介入が広がる
Biden Administration Executive Order Would Expand Regulatory Intervention in Markets Across the Economy

商事・不法行為訴訟

ニューヨーク州控訴裁判所による消費者保護法上の「消費者」の拡大解釈
New York's Highest Court Interprets "Consumer" Expansively Under Consumer Protection Statute

米連邦政府による石油・天然ガスのリース停止措置に対する差止仮処分
Preliminary Injunction Issued Preventing Ban on New Federal Oil and Gas Leases

米連邦最高裁による集団訴訟の当事者適格の限定解釈
Supreme Court Narrows Article III Standing in Damages Actions

米連邦裁判所における集団訴訟和解事案の分析(2019-2020)
Update: An Empirical Analysis of Federal Consumer Fraud Class Action Settlements (2019–2020)

事業再編・倒産

ピークの後には秋が来る:オーストラリア連邦裁判所が "Peak Indebtedness Rule"を否定
After a Peak Comes the Fall: Australian Federal Court Rejects "Peak Indebtedness Rule"

サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護

コロラド州が3番目となる包括的データ保護法を制定
Colorado Becomes Third State to Enact Comprehensive Data Privacy Law

ニューヨーク州金融サービス局がランサムウェア防止の新しいガイドラインを公表
New York Department of Financial Services Announces New Guidance on Ransomware Prevention

エネルギー

豪ニューサウスウェールズ州最高裁、鉱物販売ロイヤリティの債務不履行に対する判決を下す
Supreme Court of New South Wales Rules on Mineral Sales Royalties Default

フィナンシャル・マーケット

オーストラリアにおける金融サービス規制の最新情報
Australian Financial Services Regulatory Update

米国金融情報部門(FinCEN)による米国におけるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関する最優先事項の公表
FinCEN Issues First U.S. Priorities for Anti-Money Laundering and Counter-Terrorism Financing

公益通報者による規制当局とのやり取りを阻害しないことの重要性を示す米国証券取引委員会の近時の法執行
Recent SEC Enforcement Action Stresses Importance of Not Impeding Whistleblower Communications with Regulators

訴訟・紛争解決

中国裁判所による暫定共助措置に伴う香港仲裁の便宜
Five Years of Interim Chinese Court Measures Benefit Hong Kong-Seated Arbitrations

連邦第2巡回裁判所が投資者・国家間の仲裁に係るディスカバリを認める
Second Circuit Confirms 28 U.S.C. § 1782 Discovery for Investor-State Arbitration

政府規制

ベルギーとフランスの裁判所:新たな気候変動訴訟において政府を敗訴とする判決
Belgian and French Courts Ruled on New Climate Lawsuits Against Governments

自動車のブラックボックス:欧州連合がイベントデータレコーダーの設置を義務化
Black Boxes in Automobiles: European Union Requires Installation of Event Data Recorders

欧州気候法が2050年までの気候中立という拘束力のある目標を設定
European Climate Law Sets a Binding Objective of Climate Neutrality by 2050

英国政府、野心的な第6次炭素予算を採択
UK Government Adopts Ambitious Sixth Carbon Budget

保険補償

気候変動に関する開示が近づいている:保険プログラムの対応ができているか?
Climate Change Disclosures Are Coming: Is Your Insurance Program Ready?

知的財産

オーストラリアの裁判所、公のキャンペーンのための企業ロゴの使用は大部分においてフェアディーリングに該当すると判断
Australian Court Holds That Use of a Corporate Logo for Purposes of Engaging in a Public Campaign Amounts to Mostly Fair Dealing

立法の趣旨が正当な利益を打ち破る:二重特許が拒絶理由となることを欧州特許庁が確認
Legislative Intent Trumps Legitimate Interest: EPO Confirms Double Patenting as a Ground for Refusal

労働・人事

カリフォルニア州最高裁判所、食事および休憩時間のペナルティー計算時に「通常の賃金率」が適用されると決定
California Supreme Court Concludes "Regular Rate of Pay" Applies When Calculating Meal and Rest Period Penalties

M&A

オーストラリア証券投資委員会の最新コーポレート・ファイナンス・アップデートからのホットトピック
Hot Topics from ASIC's Latest Corporate Finance Update

証券訴訟・証券法規制執行

経営陣の多様性についての株主代表訴訟に関する近時の展開
Recent Developments in Shareholder Derivative Litigation Concerning Diversity in Corporate Leadership

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