欧州委員会、AIラベリングと透明性に関する行動規範案を公表
EUのAI法第50条は、ディープフェイクや一般向けに情報を発信する特定のAI生成出版物を含むAIにより生成および操作されたコンテンツに対して新たな透明性義務を導入しています。これらの義務は2026年8月から適用されます。
2025年12月17日、欧州委員会はEU AIオフィスを通じて、AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範のファーストドラフトを公表しました。この行動規範は、生成AIシステムのプロバイダーやデプロイヤーに対し、第50条の遵守方法に関する実践的な指針を提供することを目的としており、プロバイダーに適用される義務とデプロイヤーに適用される義務を区別して規定しています。
プロバイダーは、テキスト、音声、画像、およびビデオの各フォーマットでシステムが作り出す生成物が以下の要件を満たすことが求められます。
- 機械的に読み取ることができる方法でマーキングされ、人工的に生成または操作されたものとして検出可能であること、および
- 最先端、コンテンツごとの制約、実装コストを考慮した、効果的で相互運用性があり堅牢かつ信頼性の高い技術的ソリューションによって支えられていること
行動規範案は、あらゆる場合において単一の技術的解決策が第50条の要件を満たすことができるという考えを明確に否定しています。代わりに、削除や操作に対する耐性を高めるために、可視的な開示と不可視または機械的に読み取ることができる技術(メタデータや透かしなど)を組み合わせた多層的なアプローチを奨励しています。
技術的な対策に加え、プロバイダーは以下の内容を含む組織上の安全策も実施することが期待されています。
- ラベリングソリューションの効果をテスト、監視、および定期的に評価するための内部フレームワーク、
- 選択した措置の堅牢性と制限を示す文書、および
- ラベルの削除や操作に関する契約上またはポリシーに基づく禁止事項
行動規範案は、生成AIシステムのデプロイヤーに対して、エンドユーザーやオーディエンスとの近接性を反映した明確な義務を課しており、以下のことが期待されています。
- AI生成コンテンツには、おそくとも自然人がそのコンテンツに初めて触れた時点で明確にラベルが付けられていること、
- そのコンテンツについて有意義な人的審査が行われ編集責任が課される場合を除き、公共の利益に関する事項について一般向けに情報を提供する目的でテキストが生成または大幅に改変された場合、AIの使用を開示すること、および
- ディープフェイクやAI生成または操作されたテキスト出版物を公表するための共通アイコンを適用し、初回公表時に可視的かつ一貫性のある方法で配置すること
AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範は、自主的なルールですが、規制当局や裁判所がAI法の透明性義務の遵守を評価する際の重要な基準となる可能性があります。2026年3月に次のドラフトの公表が予定されており、最終版は、2026年8月のAI法第50条の発効に先立つ、同年6月に制定される予定です。
本コメンタリーは、EUのAI法に関する重要なトピックであり、EU市場においてAIシステムを提供または利用する日本企業にも大きな影響を有すると考えられることから紹介する次第です。詳細は、Jones Day Commentary “European Commission Publishes Draft Code of Practice on AI Labelling and Transparency”(オリジナル英語版)をご参照ください。
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