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ジョーンズ・デイ・コメンタリー:オーストラリアの州上級裁判所が暫定的な会社整理協定の効力を肯定する判断を示す

オーストラリアの倒産法制においては、経営難に陥った会社が倒産手続を開始する場合に、直ちに清算するほか、管理人(administrator)が選任されて暫定的に事業を継続する任意管理手続(voluntary administration)を選択することもできます。任意管理手続では、管理人は、会社の事業及び資産の調査を行った上で、債権者集会を開催して清算又は事業継続を提案し、主要債権者の同意を得て実行します。事業を継続する場合、管理人と主要債権者との間で会社整理協定(deed of company arrangement = DOCA)が締結され、これに基づいて債務の減免や支払猶予、資産の換価などが行われます。

管理人には、その調査及び方針の決定を行うために一定期間が与えられますが、さらに時間が必要である場合には、裁判所の許可を得て当該期間を延長するか、主要債権者との間で暫定的な会社整理協定(holding DOCA)を締結して事実上の猶予を得るかの選択肢があり、実務的には後者の方法が定着しています。

2016年7月に西オーストラリア州で開始されたMesa社の任意管理手続では、管理人がMesa社の主要債権者との間で暫定的な会社整理協定(以下「本件会社整理協定」といいます。)を締結したことに対して、直ちにMesa社を清算し資産の換価・配当を行うよう求める債権者のMighty River社が、本件会社整理協定の無効を主張して州裁判所に提訴しました。その根拠は、本件会社整理協定が①弁済原資となる資産を特定していない、②管理人が第二回債権者集会の招集時期を延長する許可を求めることができる規定を骨抜きにする、③事業継続の機会を最大化せず債権者への返済をもたらさない、というものでした。

西オーストラリア州の下級裁判所及び上訴を受けた上級裁判所は、いずれも、本件会社整理協定の効力を肯定しました。上級裁判所は、Mighty River社の主張する上記①~③の主張に対し、それぞれ、①本件会社整理協定は弁済原資となる資産がないと述べているので、資産を特定する要請に反しているわけではない、②調査をさらに行うなどのための時間を確保する方法は管理人の裁量に委ねられている、③本件会社整理協定は少なくとも、直ちに清算するよりも債権者により多く返済できる機会を提供するよう策定されているので、Mighty River社の主張には理由がない、と指摘しました。もっとも、西オーストラリア州の上級裁判所の判決は、暫定的な会社整理協定が一般的に有効となるものではなく、一定の内容を満たしていなければならないことを示唆している点は、注意を要します。

上記は、オーストラリア法人と取引があり、倒産リスクを懸念する日本企業にとって参考になると考えられ、紹介する次第です。詳細は、Jones Day Commentary “Australian Court of Appeal Approves Use of “Holding” Deed of Company Arrangement” (オリジナル(英語)版)を御覧下さい。