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ジョーンズ・デイ・アラート:欧州委員会による医療技術評価に関する新規則の提案

2018年1月31日、欧州委員会は、医療技術評価(Health Technology Assessment、HTA)に関する規則を制定するとともに、「国境を越えたヘルスケアに対する患者の権利の適用に関する指令」(Directive 2011/24/EU)を改正する法案を採択しました。

医療技術評価は、各国において医薬品及び医療機器の価格及び償還の決定に使用されており、また、臨床評価及び非臨床的側面の評価により構成されています。欧州委員会のこの法案は、欧州経済領域(EEA)レベルにおいて医療技術評価を協力して行うための統一された手続きと、医薬品や医療機器といった医療技術の臨床評価に関する共通ルールを確立することを目的としています。

この法案は、臨床評価、すなわち、特に製品の相対的な臨床的有効性や相対的な安全性に基づく、製品の相対的有効性の評価についてのみ共通ルールを設けるものであり、医療技術の費用・経済性評価や、その使用に関する倫理的、組織的、社会的及び法的側面の評価といった、非臨床的側面の評価に関するルールを設けるものではありません。この法案により、EEAの各国は、(i)ジェネリック医薬品、バイオ医薬品及び確立された用法を有する有効成分を含む医薬品を除く、中央審査方式による販売承認審査の対象となる医薬品、並びに、(ii)医療機器規則に基づきクラスⅡb及びⅢに分類される医療機器及び体外診断用医療機器規則に基づきクラスDに分類される体外診断用医薬品で、欧州委員会の専門家パネルが新たな評価諮問手続の枠組みで科学的意見又は見解を述べるものについて、共同臨床評価の結果を十分に考慮することが求められることになります。

共同臨床評価に加えて、この法案は、共同科学的協議、新規医療技術の特定、自発的協力といった、EU加盟国間の協力の対象となる3つの制度も設けています。共同科学的協議においては、製薬企業や医療機器製造企業は、自社技術の開発段階で、将来における共同臨床評価の一部として要求される可能性のあるデータや証拠について医療技術評価を管掌する当局や団体の助言を求める、いわゆる「早期対話(early dialogues)」を求めることができます。また、この法案は、患者、公衆衛生又は医療制度に対して重大な影響を与えることが予想される新規医療技術の特定について年次調査を行うことを定めており、さらに、EU加盟国が自発的に追加的な協力を行う可能性を残しています。

この法案は、新規則が施行日から3年後に適用されること、及び、段階的な適用を認める追加的な3年間の移行期間が設けられることを定めています。

1月31日、この法案は、欧州議会及び欧州連合理事会の審議・採択を受けるために提出され、2月8日に行われる第一読会に向け、欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会に付託されました。環境・公衆衛生・食品安全委員会は、この法案を欧州議会本会議における全議員による投票へ付議し、その後、欧州連合理事会に送付する前に、この法案を修正なく採択するか、修正するかのいずれかを、単純多数決による投票で決定しなければなりません。

この法案は、EUにおける医療技術評価に関するルール統一のための意欲的な一歩といえます。他方、EU加盟国が、EUレベルにおける更なる協力と統一のため、国家の特権を手放す準備ができているか否かは、いまだ不透明な状況といえます。