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ジョーンズ・デイ・コメンタリー:公取委、LNG契約における仕向地制限条項等が独禁法に違反するおそれが強いとする報告書を公表

公正取引委員会(以下「公取委」)は2017年6月、調査報告書を公表し、日本に輸入される液化天然ガス(以下「LNG」)の売買契約に規定されている仕向地制限条項等について、FOB条件の契約を中心として独占禁止法に違反するおそれが強いとの見解を表明しました。

日本が世界最大の輸入国となっているLNGをめぐっては、東日本大震災後に停止していた原子力発電所の再稼働等による国内需給の緩和が見込まれており、また経済産業省は日本の「LNG取引ハブ」化をG7エネルギー大臣会合の場で表明するなどしています。しかし、LNGの売買契約に規定されている仕向地制限条項等によって余剰となったLNGの自由な再販売が妨げられる結果、国内需給緩和への対応や日本のLNG取引ハブ化の障害となるのではないかとの懸念も広がっていました。

こうした中で、公取委は調査報告書を公表し、特に買主側が船積港からLNGを輸送し、輸送に関する一切の費用と危険を負担するFOB条件が採用されている売買契約における仕向地制限条項等について、必要性・合理性が認められず、拘束条件付取引として独占禁止法上問題となるおそれが強いとの見解を示しました。公取委はまた、売主側が仕向港までLNGを輸送し、輸送に関する一切の費用と危険を負担するDES(Ex Ship)条件が採用されている売買契約における仕向地制限条項や、利益分配条項、Take or Pay条項等についても分析を行い、一定の場合には独占禁止法上問題となるおそれがあり、またはそのおそれが強いとの見解を表明しています。

その上で公取委は、LNGの売主に対し、新規契約時や契約更新時において、再販売の制限等につながる競争制限的な契約条項や取引慣行を定めないよう促すとともに、既存契約においても、同様の競争制限的な取引慣行を見直すべきと警告し、「独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処していく」との方針を明らかにしています。これを踏まえ、LNG売買契約の当事者は、関連する契約の点検・再交渉や仕向地変更要請への適切な対応、及びそれらを誤りなく進めていくための契約管理体制の構築等を求められると考えられます。

本コメンタリーは、ジョーンズ・デイ東京オフィスの独占禁止法プラクティス及びシンガポール・オフィスのエネルギー・プラクティスに所属する弁護士らが共同で執筆したものです。LNG売買契約に関心を有する日本企業にとって有用な情報ですので紹介します。詳細は、Jones Day Commentary " Japanese Report: LNG Sale and Purchase Agreement Destination Restrictions Likely Anticompetitive"(オリジナル(英語)版)をご参照ください。