インサイト

Global Legal Update

Global Legal Update Vol. 89 | 2023年3月号

ジョーンズ・デイでは、世界各国に広がる40以上のオフィスが、現地の法令や判例等の最新情報をAlert/Commentary等としてお伝えしています。その中から日系企業に特に関心が高いと思われるものを以下でご紹介します。なお、英文部分の各リンクからAlert/Commentary等の原文をご覧頂けます。

ヘルスケア・ライフサイエンス

Vital Signs: デジタルヘルス法アップデート | 2023年冬号
Vital Signs Digital Law Health Update | Winter 2023

ジョーンズ・デイのデジタルヘルス法に関するニュースレター「Vital Signs」の2023年冬号を発行しました。

米国および全世界から、最も注目すべきデジタルヘルス法の最新情報を厳選してワンストップで「Vital Signs」をお届けします。Industry Insightsでは、2022年12月に米国公民権局が発行した、ウェブサイトやモバイルアプリケーションで追跡技術を使用する際のHIPAA対象事業者の義務に関する通達を詳しく解説しています。トラッキングテクノロジーの使用に関する法的枠組みは急速に進化し続けているため、慎重な評価と、コンプライアンスを推進するための継続的な戦略的思考が必要とされています。連邦政府および州政府のセクションでは、米国を拠点とする重要な動向のハイライトをご覧いただけます。また、欧州の数々の重要な最新情報もお見逃しなく。

知的財産

「MetaBirkins」が袋叩きに:NFTのクリエーターに商標権侵害の責任があると判断
"MetaBirkins" Bagged: NFT Creator Found Liable for Trademark Infringement

注目されていた非代替性トークン(「NFT」)に関連する商標権侵害訴訟において、陪審員は、エルメスのバーキンバッグのデジタル画像をNFTとして販売することは、エルメスの商標権を侵害し、希釈化するものであると認定しました。

カラフルな毛皮を使用したバーキンハンドバッグを描いたNFTは合衆国憲法修正第1条の保護を受ける権利があるという主張を退け、2023年2月8日、ニューヨーク南部地区の陪審員は、アーティストのメイソン・ロスチャイルド氏がエルメスの商標を侵害し、希釈化した責任を負うことを認めました。陪審員はまた、ロスチャイルド氏によるMetaBirkins.comドメイン名の登録がサイバースクワッティングに該当することを認めました。

この事件は、現実のブランドをNFTとしてコピーすることが、保護されるべき芸術的表現として認められるかどうかという問題を初めて裁判で判断したものです。エルメスは、ロスチャイルド氏の「MetaBirkin」NFTが消費者の混同を招き、NFT分野への参入を阻害したと主張しました。これに対し、ロスチャイルド氏は、毛皮で覆われたぼやけたイメージの「MetaBirkin」NFTの販売は、ファッション業界の毛皮反対運動への言及として、またバーキンバッグの現代社会への影響についてのコメントとして、保護される表現の一形態であると主張しました。そのため、ロスチャイルド氏は、合衆国憲法修正第1条に基づき責任が免除されると主張し、NFTがRogers v. Grimaldiテストの対象となり得るタイプの芸術表現であるかどうかという問題が提起されました。

略式判決においてラコフ裁判官は、「MetaBirkin」NFT は芸術的表現の一形態となり得ると判断し、エルメスの請求にRogers v. Grimaldiテストが適用されると判示しました。ロジャーズテストでは、表現活動の一環としての商標使用は、その使用が(i)芸術的に関連性があり、(ii)その他に明示的に誤解を招かない場合、修正第1条により保護されるとされています。ロジャーステストの抗弁に加えて、ロスチャイルド氏は、「MetaBirkin」の画像は単にバーキンのバッグを複製したものではなく(むしろ架空の描写であって)、実際のハンドバッグでもなく、当事者の製品の市場価格を考えると、消費者は購入前に「MetaBirkin」NFTの説明全体を慎重に確認するであろうから、混同は起こり得ないと主張していました。

ロジャーステストの判示にもかかわらず、5日間の裁判の結果、陪審員はNFTは合衆国憲法修正第1条の保護を受ける芸術ではないと判断し、エルメスの主張をすべて認め、ロスチャイルド氏の純利益として11万ドル、サイバースクワッティングに対する法定賠償として2万3000ドルをエルメスに裁定しました。

この判決は、バーチャルな文脈における現実世界のブランドの侵害を分析した初めてのケースであり、商標権者とNFTクリエーターの双方が、NFTの作成と販売に関連して合衆国憲法修正第1条の保護の限界を検討する際に考慮すべきものです。本件は、Hermes International et al. v. Rothschild, Case No.1:22-cv-00384 (S.D.N.Y.) です。


その他、2023年2月は以下の情報をAlert/Commentary としてお伝えしています。

独占禁止法・競争法

中国最高裁の判決は独占禁止法訴訟の後続を促進
China's Supreme Court Ruling Likely to Prompt More Follow-on Antitrust Litigation

事業再編・倒産

セクアナ事件(英国):倒産を見据えた状況下における取締役の義務
Sequana: Directors' Duties in a Distressed Landscape

サイバーセキュリティ・プライバシー・データ保護

米国国立標準技術研究所がAIリスク管理枠組を公開
U.S. National Institute of Standards and Technology Releases AI Risk Management Framework

消費者の健康情報と高まる監視:FTC、医療情報漏洩通知規則に基づく初の訴訟を提起
Consumer Health Information and Increased Scrutiny: FTC Brings First Action Under Health Breach Notification Rule

より良い関係を築くために:米国とEUが人工知能協業協定を締結
Better Together: U.S. and EU Enter Artificial Intelligence Collaboration Agreement

エネルギー

ワシントン州、温室効果ガス排出削減のため新たなキャップ・アンド・インベスト制度を導入
Washington State Launches New Cap-and-Invest Program

フィナンシャル・マーケット

米商品先物取引委員会、分散型金融(DeFi)に対する規制執行において、証券取引委員会及び司法省と協働
CFTC Partners with SEC and DOJ to Bring Coordinated DeFi Enforcement Action Targeting Oracle Manipulation

米国連邦準備理事会、州立銀行による暗号資産業務展開に対し新たなハードルを設ける方針声明を発表
Fed Policy Statement Adds Hurdles to Digital Asset Activities and Innovation by State Banks

ニューヨーク州金融サービス局、暗号資産のカストディ業務に係るガイダンスを発表
New York Department of Financial Services Issues Guidance on Virtual Currency Custodial Services

訴訟・紛争解決

ドイツにおけるフォルクスワーゲン社に対する気候変動訴訟の棄却判決
German Court Dismisses Climate-Related Lawsuit Against Volkswagen AG

政府規制

EUにおけるCO2規制の展開
Evolution of EU Carbon Legislation

カリフォルニア州の自動車温室効果ガス排出規制に対し、17の州と業界団体が提訴
States and Industry Groups Challenge California's Regulation of Vehicular Greenhouse Gas Emissions

英国の温室効果ガスネット・ゼロ戦略の検討
Mission Zero: A Review of the UK's Net Zero Strategy

豪州でESGリスクにより複数の石炭採掘プロジェクトが失速
Australian Coal Mine Projects Stall Due to ESG Risks

ヘルスケア・ライフサイエンス

欧州委員会、医療機器規則及び対外診断用医薬品規制への対応期限の延長を提案
EU Commission Proposes Extended Deadlines to Comply with the Medical Device Regulation and In Vitro Diagnostic Regulation

USDA、オーガニック施行強化の最終規則を発表
USDA Publishes Strengthening Organic Enforcement Final Rule

知的財産

単一特許と統一特許裁判所のポケットガイド
Pocket Guide to the Unitary Patent and Unified Patent Court

EUのオンラインマーケットプレイス運営者が商標権侵害で責任を負う可能性があるか?
Can EU Operators of Online Marketplaces be Held Liable for Trademark Infringement?

労働・人事

OFCCPが期限を延長し、EEO-1データの開示に対する新たな異議申立てに門戸を開く
OFCCP Extends Deadline and Opens Door for New Objections to Disclosure of EEO-1 Data

ジョーンズ・デイの出版物は、特定の事実関係又は状況に関して法的助言を提供するものではありません。本書に記載された内容は、一般的な情報の提供のみを目的とするものであり、ジョーンズ・デイの事前の書面による承諾を得た場合を除き、他の出版物又は法的手続きにおいて引用し又は参照することはできません。出版物の転載許可は、www.jonesday.comの“Contact Us”(お問い合わせ)フォームをご利用ください。本書の配信、および受領により弁護士と依頼人の関係が成立するものではありません。本書に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、当事務所の見解を反映したものではありません。