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ジョーンズ・デイ・アラート:中国は医薬品特許に強制実施権を設定するのか?

2015年9月9日、中国の国家衛生・家族計画委員会(NHFPC)は、がん治療に関する3カ年行動計画(2015年~2017年)を公表しました。その方策の一つとして、がんに対処すべく社会の能力を向上させるために提案されているのが特許に係る強制実施権です。

「・・・特許の強制実施権を通じて、高まりつつある医薬品利用の実現可能性を模索している。未だ国内企業が複製品を製造することができない医薬品に関して、我々は、医薬品の調達価格を安くするといった方法で、関連する医薬品の商業化の促進に医薬品価格交渉を活用すべきである。」

NHFPCのメッセージは曖昧で、世間では、政府が特許で保護された医薬品を社会に普及させるために強制実施権を用いるのではないか、又は医薬品の価格交渉における値引き圧力に強制特許実施権を用いるのではないかと推測されています。

強制特許実施権の契機は、NHFPCの医薬品政策部が「政策研究と事例分析による医薬品業界における強制実施権の国際的運用」を最優先と位置付けて2015年の研究計画を公表した2015年初頭から形成されています。その後、NHFPCは、医薬品特許に係る強制実施権許諾に関する他国での実績から教訓を引き出すために中国のトップクラスの薬科大学を選定しました。

また2012年、中国国家知的財産局(SIPO)は、詳細な特許強制実施権規則を公表し、強制実施権の設定の申請者向けの手順が示されました。SIPOはこれまで強制実施権を設定していないものの、NHFPCの3カ年行動計画は、創薬企業が中国における特許から得られる完全な利益を失うことを避けるために事前の対策を講じる必要があることを警告するものと受け止めるべきです。