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Yates Memo's Influence Felt in DOJ Health Care Enforcement

ジョーンズ・デイ・アラート:米国規制当局がヘルスケア産業に着目し続けていることを示す2017年の統計

ヘルスケア産業関係者に対する虚偽請求取締法(False Claims Act)の執行が、2017年においても引き続き行われていたことが、新たに公表された統計において明らかにされています。

米国司法省は、2017年度において、虚偽請求取締法に基づく訴訟(以下「FCA訴訟」)により37億米ドルを超える金額を回収したことを公表しました。政府全体でFCA訴訟により回収した金額は、8年連続で30億米ドルを超えており、また、直近18年のうち17年において10億米ドルを超えています。

2017年度においても、ヘルスケア産業からの回収額が、回収額の過半数を占める結果となっており、24億米ドルが、製薬企業、研究機関、病院、薬局、医師を含むヘルスケア産業関係者に関連する和解及び判決により回収されていました。これらの和解及び判決の多くは、製薬企業又は医療機器企業に関するものであり、このことは、虚偽請求取締法の執行が、引き続き、これらの企業による反キックバック法(Anti-Kickback Statute)違反を追及する米国司法省の主要な手法のひとつとなっていることを示しています。

また、私人(すなわち、告発者(relators)又は内部告発者(whistleblowers))により提起される訴訟が、虚偽請求取締法の執行を推進し続けていることが示されています。全回収額37億米ドルのうち約34億米ドルが、私人である告発者が政府を代理して提起した訴訟より回収されたものでした。また、驚くべきことに、2017年度においては、800件の新規案件のうち675件(84パーセント)が告発者によるものでした。

さらに、2017年度は、政府が介入を拒否し、私人の内部告発者により遂行された訴訟からの回収額が過去最大となった年といえ、現在、告発者が自ら訴訟を遂行する意思を有する場合が増えてきているといえます。この結果、政府に対してFCA訴訟への介入を拒否するよう説得することは、FCA訴訟手続きの中で引き続き重要なステップとはなっているものの、あくまで最初のステップに過ぎなくなってきています(なお、新たに公表された米国司法省のメモによれば、政府がこれまでほとんど行使してこなかった、政府が介入を拒否した訴えを取り下げる権限を、今後、行使することになる可能性が示唆されていますが、この点については、いまだ明らかにはなっていません。)。したがって、FCA訴訟の被告は、訴訟手続きの全般にわたり精力的な防御を継続する準備を行わなければならなくなっています。

なお、統計では、政権の交代により虚偽請求取締法の執行が大きく減少したという事実は示されませんでした。

今後、企業は、いずれの政党が政権政党であるかにかかわらず、FCA訴訟が、その中身がどのようなものであれ、重大なリスクを発生させる可能性があることを常に意識する必要があります。FCA訴訟の被告としては、FCA訴訟に対する積極的な防御方法を模索し続けることが必要とされ、法廷の内外で新たな手法の弁護活動を行うことが求められることになるといえます。