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ジョーンズ・デイ・コメンタリー:欧州委員会、Eコマース市場における最終調査報告書を公表

欧州委員会は、2017年5月10日、2015年以来のEコマース市場調査(Sector Inquiry)に関する最終報告書(以下「本報告書」)を公表しました。本報告書は、同委員会による競争法執行の優先順位が消費財及びデジタル・コンテンツのオンライン取引にあることを明確にしています。実際、同委員会は、消費者向け電気製品、ビデオゲーム及びホテル予約サービスについて競争法違反の可能性に関する調査を開始しています。同委員会は、デジタル単一市場の構築により、雇用の創出や公共サービスの変化をもたらすだけでなく、年4150億ユーロもの経済効果を欧州経済にもたらすと予測し、2015年5月以降、Eコマースの発展を妨げることになるクロスボーダーのオンライン取引に対する制限について調査してきました。本報告書は、この調査に関し同委員会が公表してきた一連の報告の最終報告ということになります。 

本調査報告書は、競争及びクロスボーダー取引ひいてはデジタル単一市場の発展に悪影響を及ぼす可能性のある一定の行為に関して、競争法の執行を優先的に行うとしています。その優先事項の中には、(1)ジオブロッキング(販売地域の制限)を含む、クロスボーダー取引に対する制限、(2)オンライン取引だけを営む事業者をネットワークから排除することを目的とした選択的流通合意、(3)オンライン取引の活用に対する制限、(4)価格比較ツールの活用に対する制限、及び(5)最低再販売価格維持行為又は同一の小売業者に対してオンライン取引とオフライン取引とで異なる価格を課す制限が含まれています。

今後、同委員会は、本報告書を契機として、Eコマース市場における競争法的観点から新たな調査を開始するとともに、反競争的な商慣行に対する監視を継続していくものと考えられます。

本コメンタリーは、欧州で事業を行う日本企業等にとって有用な情報ですので紹介します。詳細は、Jones Day Commentary “Online Trade Under Antitrust Scrutiny in EC's E-Commerce Sector Inquiry Final Report”(オリジナル(英語)版)をご参照ください。