インサイト

ジョーンズ・デイ・アラート:FDAによる米国外の製造所に関する法執行

米国食品医薬品局(FDA)の品質管理部(Office of Manufacturing Quality)が2016年に送付した警告書によると、FDAが調査した製造所に関連する違反が増加しています。具体的には、2015年と2014年にはそれぞれ22通、19通であった警告書が、2016年には、44通も送付されました。

2016年において、FDAは、米国外の医薬品製造所に焦点を当てて法執行を行いました。すなわち、米国内の施設は警告書を1通しか受領していないのに対し、中国の製造業者は15通、インドの製造業者は10通も警告書を受領しました。また、ヨーロッパの製造業者が8通の警告書を受領し、残りを、台湾、ブラジル、カナダ、イスラエル及び日本の製造業者が受領しました。

2016年に発行された警告書の約半数において、データの信頼性(Data Integrity)に関する違反が指摘されていました。FDAは、品質管理システムが 医薬品の安全性、有効性及び品質をサポートするデータの妥当性・信頼性を適切に確保できていない製造所に対し警告を発し、データの記録・報告の不正確さの程度に関する詳細な調査結果、確認された問題が医薬品の品質に及ぼす潜在的影響についてのリスクアセスメント、及び、問題点の是正及び防止に関するアクションプランの詳細を含む事業戦略を提供することを求めました。

データの信頼性について最も多かった問題は、データに対する無権限のアクセス又は変更を防止し、データの改ざん及び欠落を防ぐための適切な管理を行うことができていないということでした。例えば、多くの製造所においては、電磁的に保存された研究データの変更を防止する管理手段、又は、収集したデータを誰が管理し、監督していたかを確認する追跡システムを有していませんでした。次に多かった違反は、公式に保持されているデータと合致しないデータが記載されている、非公式な研究ノートの使用でした。

データの信頼性に関する問題に加え、FDAの調査官による製造所又はその一部の区域へのアクセスを、合理的な説明なく企業が拒否し又は遅延させたことも指摘されています。この点、FDAは、この問題に関するガイドラインにおいて、当局はどのような事項を「合理的」と判断するかについて、例示しています。例えば、無菌製造区域といった製造所の特定の区域については、調査官が製造所の書面化されたガウニングの手順を履行するまで、アクセスを遅延させることができるとされています。

警告書を受け取った企業は、製造所に関して警告書受領書後直ちに行った変更、並びに、cGMPを遵守する目的で違反状態を是正するために行う短期的及び長期的な行動を特定して、15営業日以内に返答をすることが求められます。加えて、確認された違反の性格により、FDAは、追加的なアクションをとることがあります。2016年には、警告書において指摘をされた約半数の製造所が、FDAのImport Alert 66-40に掲載されました。このことにより、米国政府は、リストされた製造所からの製品が、実地調査を経ることなく米国内に入ることを止めることができます。