ジョーンズ・デイ・アラート:180日の事前上市通知はバイオシミラー申請者が「パテントダンス」手続を行った場合であっても義務的であるとの判決

2016年7月5日、連邦控訴裁判所は、生物製剤価格競争・イノベーション法(Biologics Price Competition and Innovation Act)(以下「BPCIA」といいます。)の条項の解釈について、新たな重要な判断を下しました(Amegen Inc. v. Apotex Inc. (Fed. Cir. July 5, 2016))。裁判所は、バイオシミラー申請者が§262 (l)(2)(A)(以下「(2)(A)項」といいます。)に基づき対照薬スポンサーに対し申請及び関連する製造情報を提供するいわゆる「パテントダンス」手続を実施していた場合であっても、§262(l)(8)(A)(以下「(8)(A)項」といいます。)に基づく上市通知は義務的であり、かつ差止命令により同通知の提出を強制することができる旨を判示しました。

この判決は、BPCIAの解釈を示した2番目の判決となります。1番目の判決は、Amgen Inc. v. Sandoz Inc.(Fed. Cir. 2015)でした。Sandoz訴訟においては、裁判所は、(2)(A)項に基づく当初開示は任意である旨、及び、(8)(A)項に基づく上市通知は義務的であり、FDAによるバイオシミラーの承認後にのみ提出することができる旨を判示しました。この裁判所は、SandozがAmgenに製品情報を提供しないと選択したことは適法であったものの、当該状況下では、SandozはFDAからの承認を得た後に上市通知を行わなければならず、その後180日間は製品を販売してはならなかった旨を判示しました。

Apotex訴訟においては、Apotexは、自社とSandozの状況には大きな違いがあることに着眼し、(8)(A)項に基づく上市通知は、申請者が(2)(A)項に基づく当初開示を行わなかった場合にのみ義務的になると主張しました。また、Apotexは、2つの事例の事実関係の相違に加え、バイオシミラー申請者に対しFDA承認後に上市通知を行うことを求めることは、対照薬スポンサーに対し180日間の追加的な独占権を不当に付与することとなると主張しました。さらに、Apotexは、申請者が(8)(A)項で求められている上市通知を提供しない場合には、BPCIAは、§262(l)(9)(B)に基づく宣言的判決を求める訴訟を提起する権利を対照薬スポンサーに対し付与しており、したがって、BPCIAは、対照薬スポンサーに対し、バイオシミラー申請者が(8)(A)項を遵守しなかった場合における救済手段を提供していると主張しました。

地方裁判所は、Amgenに有利な判決を下し、Apotexに対し、FDA承認後に上市通知を行った後180日が経過するまでの間、製品を販売することを禁じました。

Apotexは、連邦控訴裁判所に控訴し、以下の2点が争点となりました。

•バイオシミラー申請者は、(2)(A)項に基づく当初開示を行った場合であっても、FDA承認後に、(8)(A)項に基づく180日間の事前上市通知を行わなければならないのか。

•§262(l)(9)は、宣言的判決を(8)(A)項の違反に対する唯一の救済手段と規定しているのか。

1つ目の争点について、裁判所は、以下のとおり、Apotexが主張したSandoz事件との区別を否定し、上市通知は(2)(A)項に基づく当初開示を行ったバイオシミラー申請者についても義務的であり、差止命令により強制することができると判示しました。

Sandoz訴訟において、裁判所は、上市通知は義務的であり、180日の期間は上市通知後から開始するものであり、また、情報交換及び特許訴訟に関する通知に係る法定の手続を完全にスキップしたバイオシミラー申請者であるSandozに対して履行を強制するためには、差止命令という手段は適切であると判示した。Apotexは、Sandozとは異なり、情報交換および特許訴訟に関する通知に係る法定の手続を履行していたのであるから、本件においては、上市通知は義務的ではなく、差止命令により強制できるものではないとの異なる結論が導かれるべきであると主張しているが、裁判所は、かかる区別を否定する。申請者がApotexの立場にあったとしても、上市通知は義務的であり、差止命令に基づき強制することができる。(判決速報3-4)

裁判所は、(8)(A)項は「独立した」規定であり、(2)(A)項から始まる情報交換手続とは別個のものであるとする従前の判示を支持しました。(同上16)

また、裁判所は、以下のとおり、(8)(A)項の明示的な意味は12年の独占期間を事実上6ヶ月間延長するものだとするApotexの主張を退けました。

(8)(A)項により、上市が対照薬スポンサーによる承認取得後12年と180日間遅れるとしても、この結果は§262(k)(7)と整合するものである。さらに、このような12年を超える遅延が時が経つにつれて減少することは、生物製剤法(Biologics Act)において暗示されている。すなわち、バイオシミラーは、生物製剤法が2010年に成立されるよりもかなり前に承認されていた対照薬のために導入されたため、法律施行後当初の数年間は、12年を超える独占期間が生じることになると思われる。しかし、時が経つにつれ、多くの対照薬は新規のものとなり、バイオシミラー申請者は、対照薬の承認から4年後に申請を行うことができることとなる(§ 262(k)(7)(b))ため、12年の独占期間が満了するよりもかなり前の時点で承認を求めることが可能になる。このような状況下においては、裁判所は、FDAが11.5年より前の時点で承認を行い、承認を12年後に発効するとみなすことができない理由を見出すことはできない(判決速報16-17)。


その後、裁判所は、(8)(A)項の目的は、「申請者の製品、使用目的、製法が承認により確定する前に、更なる特許訴訟について必要となる意思決定が、公正さ及び正確性を損なうような時間的制約の中で行われないことを担保することにある」と強調しています。

次に、裁判所は、§ 262(l)(9)は、宣言的判決を(8)(A)項の違反に対する唯一の救済手段と規定しているのかについて検討しています。

裁判所は、「宣言的判決を申し立てることは、(8)(A)項の制定時に避けようとした、性急な訴訟の問題(特許を巡り、申請者が先に訴えられることを防ぐ権利を有すること)を再び招くことになる。また、議会が、(8)(A)項の明示的な意味として、直接の差止命令による強制はできないとしていると結論づけることは正当性を欠く。」として、宣言的判決が唯一の救済手段であることが暗示されているとするApotexの主張を退けました。(判決速報25)

結論

要約すると、連邦控訴裁判所は、「申請者は、FDA審査について(2)(A)項に基づく開示を行っているか否かにかかわらず、上市前に対照薬スポンサーに対して180日前の上市通知を行わなければならない」と結論づけました。(判決速報14)

なお、米国最高裁判所は、訟務局長(Solicitor General)に対し、Sandoz判決を検討する裁量上訴(certiorari)を行うべきかの議論に加わるよう要請しています。仮に、ApotexがApotex訴訟に係る連邦巡回裁判所判決の検討を最高裁判所に求める裁量上訴の申立てを行った場合には、最高裁判所が2件の連邦巡回裁判所の判決をまとめて検討する可能性があります。
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